『SB.今日のベラルーシ』紙への記事掲載(2019年10月)

在ベラルーシ日本国大使館は2019年10月,ベラルーシの新聞『SB.今日のベラルーシ』(Belarus segodnya)紙に,ベラルーシに常駐する初代特命全権大使の着任に当たり,徳永博基大使からのメッセージを掲載しました。掲載文は,日本とベラルーシ両国が原子力発電所事故の復興を中心に相互関係を発展させてきた経緯,文化交流や留学生派遣をはじめとする人的交流の成果を振り返るとともに,二国間交流の潜在力をさらに活かすべく尽力するという,大使の決意と将来への期待を表明して結ばれています。 >> 掲載文(ロシア語)
私,徳永博基は,本年9月2日,ベラルーシに常駐する初代の日本国特命全権大使に任命されました。これまで,在ベラルーシ日本大使館はモスクワにある日本大使館の下に置かれていましたが,日本はベラルーシとの関係強化に向けて,常駐の特命全権大使の派遣を決めた次第です。
これまで,両国は,悲しい絆である放射能被害の惨事を平和な未来につなげるために力を合わせてきました。ヒロシマ・ナガサキで世界で唯一の戦争被爆国となった日本は,チェルノブイリ原子力発電所事故の最大の被災国となったベラルーシに対し,一貫して人道支援を実施してきました。日本政府による事故被災地の病院への機材供与は既に39件,総額で326万ドルを越えており,この他,日本のさまざまな市民グループが四半世紀近くに亘って物心両面での支援を続けています。
チェルノブイリ事故から25年経った2011年,東日本大震災が発生し,東北地方を中心とする地域が地震に伴う津波,福島第一原子力発電所事故による甚大な被害に見舞われると,ベラルーシはいち早く日本への支援を実施しました。義捐金などの物的援助のほか,ルカシェンコ大統領の決定に基づいて,被災地の児童が毎年夏にベラルーシでの保養に招待されています。また日本から訪れた多数の専門家グループや代表団に対し,ベラルーシはチェルノブイリ事故後に得た復興の知見を惜しみなく共有してくれました。
両国が互いに支え合う関係は,2012年12月に両国政府によって締結された原発事故後協力協定というかたちで実を結び,現在の二国間関係における柱となりました。また,チェルノブイリ事故から30年,福島の事故から5年を迎えた2016年には,日本企業によりベラルーシに150本の桜が植樹されたというのも記憶に新しいところです。
在ベラルーシ日本国大使館は,また,1993年の開館以来,文化交流や専門家の育成にも力を入れてきました。日本政府奨学金プログラムでは,日本語学習者だけでなく,幅広い専門分野のベラルーシ人留学生を日本へ派遣しており,その数はのべ100名以上になっています。また,ベラルーシを訪れる日本の観光客の数も,両国の地理的な遠さにもかかわらず,次第に増えてきています。また当館では,2013年以来,日本文化フェスティバル「ベラルーシにおける日本の秋」を実施して,多様な日本文化の魅力を紹介しています。7回目を迎えた「ベラルーシにおける日本の秋 2019」は来月末まで続きます。11月1日には,日本人の先生を招いて,代表的な伝統文化である生け花を紹介する行事が予定されています。その会場で皆様とお目にかかれることを楽しみにしていますので,ご家族やお友達などをお誘いのうえ,ぜひいらしてください。こうした行事への参加が,皆さんが日本への関心をもつきっかけとなったり,日本への理解をさらに深めるのに役立てば,私たちにとってこれほど嬉しいことはありません。
本年は特に,政府部門でも民間部門でも両国間の人的交流が活発となってきています。6月には,薗浦健太郎総理大臣補佐官(当時)が欧州競技会に合わせてベラルーシを訪れ,そして渡辺復興大臣(当時)が日本の現役閣僚として初めてベラルーシを訪問しました。また,9月には日・ベラルーシ経済フォーラムがミンスクで開催されました。近年,日本のビジネス関係者,とくにIT企業をはじめとしたスタートアップなどの若い経営者や起業家の間で,ベラルーシの高度な人材に対する注目が集まっています。ベラルーシを訪れる日本の人々の多くは,両国関係には大きな潜在力があることを感じて帰っているようです。初代の特命全権大使として,この潜在力を現実に変えていくために,最善の努力を尽くしたいと思っています。
この度,私が初代の特命全権大使に任命されたことは,このような肯定的な両国関係の発展と無縁ではありません。日本はベラルーシの皆さんに対していつでも扉を開けています。私たちは政治,経済,文化,人的交流などあらゆる分野で,両国関係が益々発展するよう期待しています。ベラルーシの皆さんと交流を深め,国同士の関係発展を支える友人を両国でますます増やしていきたいと願っています。
駐ベラルーシ日本国特命全権大使
徳永博基
2019年10月29日掲載