『ソヴィエツカヤ・ベロルシヤ』紙への記事投稿
在ベラルーシ日本国大使館は2016年5月,ベラルーシの新聞『ソヴィエツカヤ・ベロルシヤ』(SB. Belarus segodnya)紙にチェルノブイリ原子力発電所事故発生30年,東日本大震災及び福島第一原子力発電所事故発生5年に当たってのメッセージを掲載しました。
(以下,掲載文)
去る4月26日,ベラルーシでは1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故から30年を迎え,この事故で犠牲になった人々を悼むと同時に,被災地の更なる復興・発展に向けた決意が再確認されました。
この事故は日本にとっても,ベラルーシとの関係において重要な位置を占めています。ヒロシマ・ナガサキで世界唯一の被爆国となった日本は,チェルノブイリ事故の最大の被災国となったベラルーシに対し,人道支援を実施してきました。2004年以降,日本政府による「草の根・人間の安全保障無償資金協力」の枠組みにより,合計36件,総額約300万ドルの支援が実施され,被災地の病院に機材が供与されています。この草の根人道支援は現在でも継続されており,今後は対象を医療機関に限定せず,学校の機材整備などを含む,広く被災地住民の皆さまの生活に貢献する案件を形成していきたいと考えています。こうした政府レベルの支援事業のほか,きわめて重要なのは,民間レベルでの支援活動です。日本各地の大小の市民グループが,物的な支援にとどまらず,人的交流も含めたそれぞれのかたちでの支援活動を20年以上に亘って展開してきました。
また,今年3月11日で,日本におけるもう一つの悲劇である東日本大震災から5年が経過しました。この大地震によって引き起こされた津波の甚大な被害に加え,福島第一原子力発電所の事故により,多くの周辺住民が長期に亘る避難生活を余儀なくされました。この惨事に対し,事故直後から,ベラルーシ政府からの義援金,一般市民の皆さまからの募金やチャリティーイベントの開催などを通じたご支援のほか,数々のお見舞いや励ましのメッセージが寄せられました。また,2012年以降,ベラルーシ政府のご招待を受け,福島県と宮城県より,学童のグループがベラルーシでの夏の保養に訪れています。健康上の効果はもとより,ベラルーシの同世代と交流した経験は参加者にとってかけがえのない思い出となっています。こうしたベラルーシの皆さまによる物心両面でのご支援は,この5年に亘る復興へ向けた日本国民の道のりの支えとなってきました。この場を借りまして,改めて深い感謝の意を表明いたします。
また,チェルノブイリ事故の被害克服の過程で蓄積された貴重な経験を学び,福島第一原発事故後の復興に活かそうと,政府関係者,専門家など,公式訪問団だけで60グループ以上,のべ300人以上が日本からベラルーシを訪れました。こうした経験の共有をより確実なものとする目的で,2012年12月には日本とベラルーシの両国政府により,原発事故後協力協定が締結されました。これ以降,ミンスクと東京で合同委員会が交互に開催されており,チェルノブイリ・フクシマ双方の復興に携わる専門家が互いに経験を分かち合う有意義な場となっております。この協力協定は,二国間関係における柱となっております。
東日本大震災5年,チェルノブイリ事故30年という節目を迎えた2016年春,日本とベラルーシの関係において,一つの記念すべき出来事がありました。日本企業JT社より,ベラルーシに対し桜の苗木150本が寄贈されたのです。苗木はミンスク市内の民族友好公園などに植えられました。今はまだ小さな苗木ですが,ベラルーシの厳しい冬を乗り越え,いつの日か美しい花を咲かせ,ベラルーシと日本の友好の象徴に育ってくれることを願って止みません。日本国大使館は,先に述べた人道支援のほか,日本文化フェスティバル「日本の秋」や日本国政府奨学金による留学生派遣などの文化事業も継続してまいります。これら事業を通じて日本とベラルーシ両国関係の将来を担う若い世代が桜とともに力強く育つべく,力を尽くしていく所存です。
掲載日:2016年5月20日